彼の恋人

高橋晶子  2008-02-03投稿
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センター試験が始まった。
小雪が舞い散る中、桜庭学園の特進クラスの生徒は教師達に見守られながら2日間の戦いに臨む。全ては、大学こそ思い通りの進路を歩むためだ。「今時の青春」を犠牲にしてきた3年間が報われるチャンスがセンター試験である。だから彼等の熱意は修学館や青海の生徒達に引けを取らないという自負がある。
暁は高校生活を振り返り、感嘆を込めて言い切る。
「皮肉なもんだよ。大学に受かりさえすれば、出身高校なんてどうでも良くなるんだもんな」
傍で聞いていたみくは鋭く切り返す。
「でも、どういう大学に入ったかで、就職活動であからさまな差別を受けるものよ。企業側の先入観に縛られている所があって、卒業生の力が強い所があるのよ。4年後の自分を想像すれば、自分に合う大学なんて簡単に絞り込めるんじゃないの?」

試験会場には修学館や青海の生徒の姿はない。
1日目に外国語と文系科目、2日目に理系科目の試験が夕刻まで行われる。学校の演習と模試だけで受験対策を行った一つの成果が試される。
翌日の新聞に発表される正答を気にせず、順当にマークシートを塗り潰す。国公立狙いのみくと暁は2日目の夕刻まで試験に挑んでいた。
試験を終えてバスに乗り込んだみくと暁は、やはり試験を終えたばかりの裕介と州和とばったり会った。先に気付いたのは裕介だった。
「久し振りだな、みく!」
裕介のの太い声にみくはびびった。
「桜庭の制服におさげ髪の眼鏡女と言ったらお前しか思いつかないんだよ。一緒にいる奴も6時半まで試験を受けてたの?」
みくは急によそよそしい態度に出る。
「そ、そう。私は地学で彼は物理で試験を受けたの。私の志望校はセンターで8割以上解けてないと受からないから必死だったわ。所で、この時間に博文君達に合う予定はあるの?」
裕介と州和はみくの発言にドキッとした。というのも、センター試験の反省会の名目で博文達はファーストフード店で二人の到着を待っているのだ。州和はみくと暁を誘いに出る。
「君達はまっすぐ家に帰るの? たまには思い切りハメを外すくらいのも悪くないじゃない。ねぇ?」



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