最悪だ…まさか次の人生？が犬だったなんて。あの死神は、確かに人間に生まれ変わるとは、言っていなかったが…でも、次の生まれ変わりが犬だと知っていたら、絶対に断っていた…騙された…。
虚しく大きな声で吠えてみた。もちろん伝わる訳もなく。
「おお、元気な仔犬だな〜」
気が付けば、母親いや母犬の回りには、人間が居た。そして私を抱き抱えると母犬の傍に置いた。誰に教えられた訳でもないのに、母犬の乳を探す。そして力いっぱい母乳を吸う。しかし一体これからどうすれば良いのか。犬として生きていかなければいけないのか。母乳を吸いながら、私は眠ってしまった。
母犬の身体は、とても暖かく、まるで撫でてくれるように舐めてくれる。物凄く落ち着く、こんな感じ前世の時に感じれてただろうか。
そしてしばらくすると回りに、沢山の兄弟達が居た。
どうやら私の後に生まれてきた弟や妹達である。
「兄弟」
前世では、天涯孤独の身だった自分には感動的な響きだ。
そして弟達とじゃれあう。
お腹が空くと母犬の元へ。
そしてまたじゃれあい疲れると母犬の傍で兄弟で固まって眠りにつく毎日。
それは、なんとも悪くないと思いだした。そして永遠に続けばいいとも。
しかし母犬が信じられないことを言い出した。
「坊や達、あなた達はもうすぐ連れて行かれてバラバラになってしまうのよ」
？？？
「この家はね、ブリーダーという仕事をしているのよ。ブリーダーというのは、あなた達仔犬を人間達のペットとして売り出すのよ。もう、あなた達で三回目なのよ。生まれた子供達は、全員連れていかれたわ。その後会った事もなく、どうしてるのかも分からないわ」
？？？
そして、しばらくすると兄弟が人間に連れて行かれてしまう、そして自分も…「嫌だ」目一杯の力で吠えてみたけど、無力なものだ。母犬は、じっとこっちの方を悲しげに見ていた。
確かに、自分がお腹を痛めて産んだ仔犬達をすぐに連れていかれてしまう母犬の方が、きっと辛いはずだ。
「必ず元気で幸せになるからね〜」「お母さんも元気でね〜」ずっと母犬の方を向いて吠え続けた。
人間とは、なんて酷い事をするもんだ。
しばらくすると、私は硝子張りの箱の中にいた。毛の色や大きさが違う仔犬が別の箱に沢山居た。ペットショップという所らしい。
我々は商品なのだ…
[358] 
[0] 
[0]
