あの日が
ふたりの最後と
知っていたなら
もっと君を笑わせたのに
君にもう
触れられないと知っていたなら
もっと強く抱きしめたのに。
結局
僕は最後まで
君を怒らせてばかりいた
君を泣かせてばかりいた
僕はいつも言葉に逃げたね
君に何かを偽って。
最後の電話。
切れたあと
僕は
ゼンマイの切れた
ロボットみたいに
動くこともせず
泣くことも忘れて
ただ
過ぎ去った
君の姿を
瞳の奥で
追いかけていた
ヒグラシが
カナカナカナカナ
鳴いていた
僕のかわりに
カナカナカナカナ
泣いていた。