僕は彼女と少し距離を置くことにした。
彼女を嫌いになったとか、そんな理由からではない。
むしろ、彼女を手放したくなかったから…
このまま彼女の近くにいたら、また傷つけてしまいそうだった。
彼女と距離を置いて、初めて気付いたことがあった。
どうやら僕は最近、女子に人気があるようだ。
ちらちらと様子をうかがう女子のグループも多かったし、
彼女らの話題に上ることも少なくなかった。
そのどれもが好意的なもので、聞いていない風を装っていても、思わず照れ笑いが口元に浮かんだ。
女子にモテて嬉しくないわけがない。
“彼女がいるから別に関係ない”
――なんて
達観して言えるほどモテたことなんてなかったから、
一時的にでも彼女のことを忘れ、浮かれてしまっていた。
まして、好いてくれている女子の中に、以前片思いしていた藤本さんもいたのだから、
その浮かれようは想像に難しくないと思う。
それが、彼女を深く傷つけていたなんて、僕は夢にも思わなかった。