ワンバウンドする勢いで地に打ち倒された木崎を横目に、ジェフと木崎の配下達が門に攻撃を仕掛けていくのを目の端にとどめた山際晋は、イーズに怒鳴る。
「青龍(ちんろん)を起こせ! 門前の守りに使うんだ!」
晋の言葉にハッとなったイーズは、『呂の名において命ずる』と心の中でとなえた。
その瞬間、青い龍のブレスレットの目が開き、シュルッとほどけると巨大な全容をあらわにしていく。
「待て! … こいつら妙な術を使うぞ」
各々の組の伍長が部下をおしとどめる。 門前をドラム缶ほどの太さを持つ巨体がふさぎ、彼らは進退きわまった。
「ハアーッ! これもオマケにくれてやらあっ!」
威勢のいい気合いを放ったリンは、左右の棒を受けとめられると間髪入れず、蹴りを出す。
どかっ! とまともに食らった鬼島義行が、下がりつつ咳き込んでいた。
「ゴフッ‥ くそガキが、目上はいたわるもんだ」
ひるまず今度は鬼島が攻勢に転じ、リンの胴に痛烈な一撃を見舞った。
「やかましいや! ボケ防止にちょうどいいだろ … イテテ …」
口八丁手八丁の二人の戦いは、戦場でなければ失笑を買うように明るかった。
「フンッ」
ジェフの蹴りを剛が虎形で受けとめた瞬間、宙高く飛翔していた晋が上空から襲いかかる。
「ハー――ッ!」
長く尾をひく気合いと共に、ジェフの顔面を鷲掴みするように打ち込んだ晋は、その勢いに乗り地面にそのまま叩きつけていった。
「形意拳を使うのは何年ぶりだろうな」
晋の使った技は、ドラゴンの代名詞となった【龍形(ろんしん)】である。
剛との戦い以来、封印していたものであった。