チェス・ノーマンを首領とする帝国軍。
サムナ・フィリップを首領とする共和国軍。
これから記す物語は、この世界ガイアと共に生きた者達の奇跡である。
彼は夢を見ていた。
それは遠い日の夢。
彼は確かに生きていた。
彼は確かに何かを掴んでいた。
彼は確かに……愛していた。
世界を…………。
彼女を…………。
窓から差し込む朝の柔らかい光りと、小鳥の囀り。
朝がきたのか……。
頭が痛む。
動けるだろうか？
全身に黒装束を纏った青年が、純白のベッドに倒れる様に横たわっていた。
青年が横たわっているベッドの横には一本の黒剣が無造作に転がり落ちている。
渇いた血液がこびりついた黒剣は朝の日差しを反射し、美しく漆黒に輝いていた。
「うっ」
短い唸り声と共に青年は自身の半身をゆっくりとベッドから起こした。
長めの黒髪の中から覗く青年の切れ長の瞳は、真っ先に床にある黒剣に向けられていた。
―――なぁ俺、ヴェノムに入るよ―――＼r
遠い日の記憶が青年の頭を過ぎる。
あと何人殺せば戦争は終わるのだろうか？
いや、そもそも自分のやっていることに意味があるのだろうか？
答えを求める様に青年は黒剣を見つめていた。
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