「あなた、シェークスピアぐらい知ってるでしょう?」
バーバリーが信じられないという様子で言った。
「もちろんよ。」
私はようやく、死にかけのじいさん先生が、ぼそぼそと消え入りそうな声で、シェークスピアについて講義したのを思い出していた。
「でも、あんなカビのはえた英語の時代劇なんて、正直ゴメンこうむりたいわ。」
一同沈黙。
「ねぇ、…」
マリークワントがまるで未開の人間に話し掛けるように言った。
「あなた大学では何を専攻してるの?」
「何って、英文学よ。クイーンズイングリッシュが好きなの。」
一同再び沈黙。
すると突然笑い声がおこった。ポールだった。皆ポールが笑うのを初めてみた。それまで母親にお利口にしてなさい、と言いつけられた少年のようにむっつりしていたから、皆、余計に驚き、唖然としてポールを見守っていた。
「いや、その通りかもしれないよ!今を生きる僕達は、過去に囚われてすぎているのはよくない。現代のクイーンズイングリッシュを学ぶべきなのかも。」
やっと笑いがおさまったポールはわけのわからないことをまくしたてた。