* * * * * *
『木下。何故此処へ呼ばれたのか分かるな?!』
渋川は、あたしの顔を見るなりそう言ったー。
『はいー。』
『昨日、休み時間の間に、北岡と二人で教室を飛び出したそうじゃないか?!』
ほら来たー。
『お前も知っているとは思うが、北岡の行動には常に問題が付き纏っているー。』
だから何だってのよー。
『実は北岡はな、心臓が弱くて、お前達より二年年上なんだー。』
知ってるわよ、
そんなコトー。
『それで引け目を感じているのかどうかは分からんが、周囲の大人達に対して、酷く攻撃的でなー。』
それはあんた達、
大人が悪いんでしょー。
『義務教育じゃなかったら即、退学と言っても過言ではないだろうー。』
本人は、それで喜ぶかもよー。
『北岡の噂は校内外でよく聞くが、全て悪い噂ばかりだー。』
悪い噂しか噂しないからねー。
『木下。どうした?!お前はクラスでも成績は良い方だし、素行も真面目だー。』
あら、ありがとうー。
『北岡の様な素行の悪い人間と付き合っていると、お前まであの様な人間になってしまうぞ。』
あの様な人間てどういう意味よー。
『くれぐれも自分の行動には誤解を受けない様、気をつけてくれよ。お前達は、まだ未成年ー。
何かあったら、お前の母さんが責任取らなくてはならないのだからな。』
何かあって困るのは、あんたも同じでしょ?!
『今回は特に何か問題を起こした訳ではないから、昨日の件に関してはこれで終わるが、北岡は今日は休みだから、後日本人に厳重注意する事にする。』
渋川はそう言うと、あたしをその場から解放してくれたー。
この日に限っては、渋川が、“事勿れ主義のサラリーマン教師”であると言う事が、あたし達にとってはラッキーだったー。
あたしの教室へ向かう足取りもー
何時になく軽く弾んでいたと思うー。
この後に味わうユカからの屈辱的な仕打ちが待っているとも知らずにー。