四色2
黒沢が去った後、私はやっと念願の煙草にありつけた。
プカプカと煙を吐きながら私は初めて黒沢のことをしったときのことを考えていた。
半年前、私がこの学校に赴任してき時の初めての授業だった。
生徒たちの学力などまったく知らず、抜き打ちテストをしたのだが、結果をみて驚いた
一人だけ満点がいたのだ。
そのことを同僚の教師に話すとおもむろにこんなことを言われたのだ。
「黒沢君だろぅ?彼は本当に賢いからねぇ。知らなかったの?あぁ、君は新任だからかぁ」何故かこの同僚の藤川は語尾を伸ばすくせのある話し方だ
「しかし、これは異常です」
「私が出した問題は偏差値70以上の問題ですよ?」
彼は少し目を見開いたが、まぁ彼ならねぇと言った
「というより何で君、そんな問題出したのよ?」
「いや…………」私は口ごもる
『こんな馬鹿な奴らばっかりだとは思わなかった』など口に出来やしない
「とにかくさぁ黒沢君は天才なんだよなぁ」彼は自分のことのように鼻が高いようだった
懐疑的な心境だったが、この時確かに自分の中に興味が生まれたのは事実だ。そして妙な胸騒ぎもした
私達、教師は立場上、生徒の情報はある程度知ることが可能だ。
その日、私は黒沢の生徒資料を興味本意で見てみた。一応クラス全員の名簿は手元にあるのだが、真剣に読むのはこれが初めてだった。
生徒の名簿には簡単な情報が記されていて小さく左上に顔写真が張られている
ぼさぼさの髪ととろんとした目、特徴というようなものは何もなく、どこにでもいそうな普通の青年だった。