『里奈!ちょっとアタシの話し聞いてくんない?』
…またか…だけど、いつもの相談事とは明らかに違うとわかる優香の声のトーンに、一瞬ドキッとした。
『実はさ、あたし妊娠してるみたいなんだよねぇ。しかも、一回コッキリのヤツとの…アハッ』
どうにか笑ってはいるものの、顔の引き攣りは隠せない。しかも、優香って子はこんなことを笑って話せるほど場数をふんでるわけでもオチャラケキャラなわけでも・ない。
〈…もっと遊んでる子の相談なら楽だったのになぁ〜…〉
『で、どうしたいの』 どうにか出てきた言葉がこんなだった。
『さぁ〜?産みたいのかなぁ〜』
『でもさ、付き合ってるわけでもないんでしょ?その人と』
一瞬 間 があって、優香は張り切ってみせた。
『パパがいなくたって産めるし大丈夫だよね』
だよね言われても…。
『応援してくれるでしょ?あたし、マジだし』
マジの意味がわからない…なんでこんな簡単に産むとか言えるんだろ。相手は何モンだよ!それより、あたしらまだ14だよ。ありえない……
早速、優香は両親に "産む”ことを宣言した。
まさか、里奈にとって自分がこの”産む”ことの一番の被害者になるとは予想もしなかった。
母である私は、この頃里奈が悩み・苦しんでいることに全く気付いてはいなかったのです。
どうにもならなくなる…最期を迎えるたった一日前に、里奈から初めて聞かされた”事の発端”だったのです。
〈あたし、間違ったこと言っちゃったみたい…とても、とても傷つけてしまうことを・・・〉