現実から戻ってきた平田は自分がどうすれば助かるかを瞬時に理解した。
そして、横たわるゆかりを救うには。
刀がぎりぎりまで迫る。
とっさに左に避けた。
叫びながら前橋の鳩尾にタックルを食らわせて押し倒し、刀を持つ手を蹴りあげた。からんからん、と刀は床を転がり、壁にぶつかって転がるのをやめた。
平田は呼吸を荒げながら、馬乗りになり、前橋をにらみつけた。
「今川が軍師…雪斎か」
「…思い出した?」
にいっと前橋はらしくない笑みを浮かべた。
「何が目的だ!」
「君が知る必要はないよ」「答えろ!」
前橋は平田に楽しげにため息をついた。
「あのさ、こうやって言い合いしてるのはいいけど」前橋がにやりと笑った。 「勘助、死んじゃうよ?」思わずその言葉にゆかりを見た。その瞬間。
重くて鋭い痛み左腕を突き抜けた。
「う、あぁあああっ!!」平田は痛みにのたうち回った。
腕を見ると、刃渡りが五センチ以上もある小刀が突き刺さって、おびただしく流血していた。