『いらっしゃいませ。
割り物はどうしますか?ご指名は?』
二人組のお客様に尋ねた。すると一人が
『ウーロン!指名はお前だよ!』と答えた。
僕を指名してたお客様だ。
そう、この時僕はホストをしていた。
一体なんでこんな仕事始めたのかは分からない。
まぁ多分ノリだ。
なにはともあれとりあえず話を始める。
『この子は私の友達だから楽しませてあげてね。』
『雫です。よろしく』
となりの友達らしき女性を紹介されたので、適当な自己紹介を済ます。
どうやらテミという名前らしい。
38歳、旦那と中二の息子あり。
完全に興味ゼロ。
そう思っていた。
まぁ、とりあえず場を盛り上げようと思い喋る。
楽しそうにされると少なからず自分のモチベーションも上がるし仕事も楽に感じる。
何しろこんな店に飲みに来るような女性に恋愛感情を抱く事はまず無いと思っていたし、だったら如何に楽に勤務時間を過ごすかが僕の課題だった。
だがこの時僕はこの仕事を辞めようとしてたんだ。
毎日アルコールを飲み続けたせいで血を吐いたり、体に限界を感じていたからだ。
元々静かな性格だったし、アルコールが入らないとお客のテンションについていけなかったから飲むしかなかった。
毎日激痛と戦ってたな…。