泣いてはいけないー。
泣くなよ、あたしー。
泣いたらコイツらの思うツボじゃんよー。
今までどんなに酷いイジメを受けても、
あたしはコイツらの前で泣いた事は無かった筈ー。
ほらー。
ユカがこっちを見てるー。
さっきあたしが職員室へ行こうとした時ー
フッと視界に入った、ユカの鋭い目つきー。
そしてー
ユカのあたしへの嫌がらせに加わるクラスメイト達ー。
“クス‥クスクス‥‥”
“泣けよ‥ほら‥”
“しぶてぇ〜な。まだ泣かないぜ?!”
“もう少しなんだけどな。早く泣けよ!!面白くねぇ〜。”
“ほんっと!!苛めがいがないわよね〜。”
恐らくユカが仕組んだものだろうー。
人の困っている姿を見るのってー
さぞかし楽しいでしょうねー
なんとか涙を堪えていたあたしー
このままこの場を乗り切ればー
そう思って堪えていたー。
堪え切れる筈だったー。
なのにー
ボロボロのスケッチブックの次ページを開いた途端ー
その思いは見事に打ち砕かれたー。
“きのした なおのかお”
夏休み中ー
公園で、聖人が描いてくれたあたしの似顔絵ー。
その絵がカッターでズタズタに引き裂かれていたんだー。
それでも腹の底から沸き返る熱い感情がー
やがてー
目の中から溢れてくる熱いモノに変わるまでー
まだ、そのギリギリの所であたしは耐えていたー。
足が震えてるー
その震えが段々、上半身へと伝わって来たー。
ポロッ‥‥。
やだ‥‥。
涙がー
一粒の涙があたしの目からポツリと落ちた、
その時ー
ガラッ―ー‐。
教室のドアが開いたー。
『コラァ!!何やってんだテメェラわあぁ!!』
そこに立っていたのはー
今日は休みの筈の
聖人だったー。