「レーダー、通信、共に異常なし!卯月晴、『零10号機』……」
ハルは勇んだ。男なら一度は憧れる台詞だ。
「卯月ッ!」
若山の雷がイヤホンを通して脳に響き渡る。
「ハイッ!」
「浮かれるな!!」
「ハイッ!」
初めての出撃。恐怖は無かった。恐怖なら、二ヶ月前、東京の瓦礫の中に落っことしてきた。
戦闘機形態の「零」のエンジンが咆哮する。
主に戦闘機としての空戦を想定した日本軍主力WW、戦闘機形態の「零」は従来の戦闘機と姿が変わらない。
ガキの頃見た某ロボットアニメのような派手なデザインでないのが残念だが。
「発進します!」
直後、考えられないGがかかり、腹がくすぐったいような痛いような、あの感覚に襲われる。
目にも止まらないスピードでハルの10号機はあおかぜ右舷から勢い良く飛び出した。
「ひゃっほーぅ!!!」
ハルは通信を一時切ったのを確認して絶叫した。
後から9機の零が続く。
(左舷からとっ突く。2、3、4。私に続け。)
(了解。)
1号機に搭乗するイケメン隊長、狩野京一大尉が指示を出す。
(若山軍曹、7以降を率いて背後に回れ。)
(了解した。)
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