『…里奈さん、…優香さん、生徒指導室に来なさい』
突然の呼び出し…だけど、こうなる事は百も承知…そんな気持ちで二人は呼び出しに応じた。
〈でも、何でアタシが?〉 里奈は、悶々とした気持ちも抱えていた。
生徒指導室には、優香の両親・担任の八巻・学年主任の元村・保健の佐々木・・・ずらりと顔を入口に向けて二人を待ち構えていた。
『失れぃ・・』最後まで言い終わらないうちに、主任の元村が怒鳴り声を上げた。
『何やってんだお前らっ!』
真っ赤な顔に二人は殺気を感じ後ずさりした。
『とにかく、こちらに座りなさい』
保健室のマドンナが優しくなだめた。
『どんなに怒られても、アタシ産む。産みます!!』
優香は震える声で、けれど、真っ直ぐ強い視線で…
『きっと、まだ混乱しているだけなんです。もう少し時間が経てば冷静に考えられるよね』
優香の母が取り繕ったが、優香の強い視線はビクとも動かない。里奈も負けじと主任を睨んだ。
『お前は友達として、ちゃんと乗るべき相談に乗ったのか』
『はい、優香さんが望むことに賛成し、応援すると話しました』
『14だよじゅうよん!わけがわかってんのか?応援て何だ?頑張ってっつって子供が育つのか!』
もう、何を話しても無駄だと思った。説得なんて…
『とにかくね、あなたたちの身体はまだまだ子供なの。その身体で妊娠しても、ちゃんと赤ちゃんが育つかどうかもわからないの。いくら生理がきていても、妊娠できても、あなたたちの身体じゃまだ無理なのよ』
歳・歳・歳・・・うんざりする。じゃぁ………
『大人になったって、いい年こいてたって、まともな結婚してたって、毎晩ヤッてたって、妊娠しないヤツだっているじゃんよ。妊娠したって育てらんなくて”お流れ”になるヤツだって……』
ヤバイ・・・
『そーゆー大人様よりいいんじゃねーの?』
ヤバイんだよ…そこまで言っちゃぁ…止まんない…
『産める時に産んどくほうが後で泣くよりいーでしょ』
キタッ!!左頬にバシッと、鈍い痛みが・・
里奈の目の前に、小刻みに震えて目をひんむいて怒っている”保健室のマドンナ”がいた。