〈カグとシュリのはなし〉
一、
万物をあまねく照らし、光をお届けになる輝羅(きら)の神がお隠れになり
灰の衣をまとった天からは、白いつぶてが降りそそぐようになった。
天を刺さんとしてそびえ立つ山々に囲まれた、布瑠(ふる)の村にもまた、つぶてはやってきた。
つぶては土の上や畑を一面に白くおおいつくし、カグとシュリの兄弟とその父母の住む茅葺の小屋の上にも静かに降り積もった。
蒼白い冷気がしんしんとしみいり、布瑠に鎮守の気配が満ちた。
シュリは弟のカグを抱き、母のミツチがそのふくよかな体で押し包むようにして息子二人を抱え暖めた。
父のフツは家の中の火を絶やさぬように炉に薪をくべる。
「にいちゃん、神さまはいつお見えになる?」
カグがシュリにたずねた。
「芽吹(めぶき)の女神さまがいらっしゃって、眠っておられる輝羅の神さまのまぶたを優しくなでられる。
そうしてお目覚めになったら、また天にお見えになるよ」
「ふうん。じゃあなぜ輝羅の神さまがねむっているあいだ、天から寒いものが降ってくるの?」