幼い頃の自分は、とりわけ何処にでもいるような平凡な家庭の平凡な子供だった。
もっと詳しく言うと少し気が小さく、おとなしいメガネをかけた女の子。
とてもお父さん子だった。
そんな父親が私が小学校六年の時に病気で他界してしまった。
父が亡くなるまでの半年間、父は病気で弱っていく姿を子供たちには見せたくないといい、ほとんど面会をさせてもらえなかった。
ある夜、寝ていると電話がかかってきて父の危篤の知らせ…
急いで病院に行くともう意識のない父がベットに横たわっていた。
不思議なことにベットに横たわっている人間は父親以外の何者でもないのにその人間が父親であるという実感が到底わかなかった。
そして、更に不思議なことに、そのベットに横たわっている人間の死を願う自分がいた。
あれだけ父親っ子だった自分がどうして大好きだったお父さんに早く死んで欲しいと思ったのだろう…
その答えだけは私の人生の最大の謎であり、最大の汚点の感情だ。
父が亡くなり、家族は母親、弟、私の三人になってしまった。
母親とは昔から馬が合わない。
というか母が嫌いだった。
事あるごとにすぐに私を殴りつける母親、そんな母を殺してやりたいと思ったことはしょっちゅうあった。
弟とも、私が中学にあがる頃にはほとんど口も聞かなくなっていた。