航宙機動部隊前史・37

まっかつ  2008-02-09投稿
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やがて中央と辺境の逆転現象が始まった。
特に銀河元号一三星紀に入ると、宙邦群は経済・技術分野で完全に宙際連合を圧倒した。
中央域では対抗改革の運動が始まり、それは大元の宗教界をも揺るがした。
人類宇宙文明を支配する三つの柱―惑星開発・定住・そして現行人類種の保護―その外側にあったのが旧航宙遊牧民族だったが、内側を占める保守派の中でもより原理主義的グループと、リベラルな党派とが存在していたのだ。

その保守リベラルが旧航宙遊牧民族や現宙邦群の異質な文明・科学技術を取り入れて中央域文明圏を蘇らせようと新たに保守新党を形成した。
科学技術万能思想を掲げた彼等は、地球時代の文明区分を参考に《西流派》・もしくは《新党》と通称された。
一方、これに警戒感を深めた保守原理主義派は権威統制及び倫理の徹底を叫び出し、《東流派》もしくは《旧党》を立ち上げ、西流派に対抗する。

この両者の争いは年々激化した。
西流派主導の元で宙際連合の国力は立ち直り、経済も久方振りに高度成長を達成したが、それは格差の拡大に繋がると、富の配分に預かれない貧困層が増加し、彼等の多くが流れた旧党が力を得ると、西流派に対する大々的なパージ《公職追放》が展開され、閉め出された西流派の要人や冨裕層・科学者・エンジニア・知識人の大半が比較的思想が近い宙邦群に逃げ込むと、今度は繁栄の担い手を失った宙際連合はガクッと失速する。
その為再び混乱が始まり、宙邦の支援の元返り咲いた新党が一まず国内を立て直すが、すぐに政権を奪われた東流派の巻き返しに遭い、再び亡命の憂き目に遭う―\r

この繰り返しは余そ一00年続き、宙際連合の国力・経済力・統制・権威を確実に奪って行った。
党争は違法色を帯び、違法は暴力を直ぐに呼び寄せ、それはやがて大規模な軍事衝突に発展した。
更に悪い事に、宗教界もこの争いに巻き込まれた。
もっとはっきり言えば、積極的に関与していた。
激化した内戦に苦しむ中央域文明圏は、介入した宙邦群の絶好の草刈り場と化した。
宙際連合はこれで完全に空洞化し、歴史と伝統にしがみ付くだけの名ばかりの統一機構に成り下がった。

こうして宙邦群による遠慮仮借無き攻伐の時代が始まるのである。



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