生きる

琥珀  2008-02-09投稿
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ある時代のある場所。乱れた世の物語・・・・・。
乱れた世の片隅、少年は生きるため、盗みを覚え生きていた。
少年には親がいない、少年には身体を気遣ってくれる者もいない。少年はこの世界でたった一人だった。
少年は生きるため盗みを働いた、少年は捕まることはなかった、醜く太った大人達には風のように走る少年を捕まえることは出来なかった。毎日お腹を満たすのが少年の全てだった。生きたいという本能だけで生きていた。
そこには善も悪もなく、ただ純粋に生きているだけだった。清らかなその心は穢けがれもせず罪を重ねていった・・・・・・。
天国も地獄でさえもここよりマシなら喜んで行こう。

「人は皆平等などと、どこのペテン師の言葉だろう・・・・・」

少年はパンを盗んだ。
生きるために・・・・・

逃げる途中、すれ違う行列の中の美しい少女に少年は目を奪われ立ち尽くした。遠い町から売られて来たのだろう、うつむいた少女の瞳には涙が流れていた。
その少女は金持ちの家に入って行った。
少年は、それを見届けたあと叫びながらまた走りだした。
清らかなあの身体に穢た手が触れているのか・・・・・。少年にはチカラがなかった、少女を助け出すだけのチカラが・・・・・。

「神様がいるとしたら何故僕等だけを愛してくれないのか・・・・・」

少年の全てが変わろうとしていた。
生きることが全てだった少年が生きる以外の事をしようとしていた。
少年は夕暮れを待って剣を盗みに行った。重たい剣を引きずって走るその姿は悲しい風のようだった。
少年は走った、あの少女のいる家に、カルマの坂道を登って・・・・・。

少年は怒りと憎しみに染まった自分の心を切るように人を切っていった。
穢を知らなかった少年の心と身体は赤く染まっていった。
血で濡らした道を抜けてたどり着いた少女はもう、壊された魂のようになってしまっていた。それでも少年を見つけると少女は少年にむかい微笑んだ。
少年は最後のチカラを振り絞り少女を繋いでいた鎖を壊し、少女と一緒に風になって走った。

ある時代のある場所の物語

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