§旅立ちの日に§

優梨  2008-02-10投稿
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あの日以来…私の心に残っているもの。

それは、後悔と悲しみの固まりだった。

現在、20才になった私。中村三咲は、前に通っていたN小学校の前を通りかかった。

もう卒業式の練習が始まっているらしい、いつ聞いても切なくなる‘旅立ちの日に,が流れている。

あぁ、このころになるといつもあの日を思い出す。

あんなに好きだったのになにもせずに卒業してしまったあの日を。

どうしてなにも言わなかったのだろう…?

なんで好きだと伝えられなかったのだろう…?

それは、私が臆病だからだよね。フラれたらどうしようとか、達也に嫌われたらどうしようとか、そんなことしか考えてなかったんだ。

私ももう二十歳だから、それなりに男性と付き合ってきた。

だけどね、なんか違うの。


達也といた時の、あの気持ちにはならないの。


楽しくて、だけど切なくて、そんな気持ちになったのは達也にだけだよ…?


不意に涙がこぼれてきた。私…なにやってんだろう。

とめどなく溢れる涙は、もう自分じゃ止められなかった。

「…うぅ…っ…グスン…」

そんな時、後ろから聞こえた声に身体が硬直した。


「…っ中村!?久しぶりって…なに泣いてんの!?!?」


それは、大好きな達也の声だった。


ドクンドクン


急に涙がひいてきて、心臓がこわれるくらいに激しく脈をうちはじめた。


ほら…こんなに好きなんじゃんよ。言わなきゃ…


今言わないでどうするの?

これは神様がくれたチャンス。

私は手をギュッとにぎりしめて大きく息をすった。

「…私…」

そうだよ、言える時は、今しかないのだから。

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