あの日以来…私の心に残っているもの。
それは、後悔と悲しみの固まりだった。
現在、20才になった私。中村三咲は、前に通っていたN小学校の前を通りかかった。
もう卒業式の練習が始まっているらしい、いつ聞いても切なくなる‘旅立ちの日に,が流れている。
あぁ、このころになるといつもあの日を思い出す。
あんなに好きだったのになにもせずに卒業してしまったあの日を。
どうしてなにも言わなかったのだろう…?
なんで好きだと伝えられなかったのだろう…?
それは、私が臆病だからだよね。フラれたらどうしようとか、達也に嫌われたらどうしようとか、そんなことしか考えてなかったんだ。
私ももう二十歳だから、それなりに男性と付き合ってきた。
だけどね、なんか違うの。
達也といた時の、あの気持ちにはならないの。
楽しくて、だけど切なくて、そんな気持ちになったのは達也にだけだよ…?
不意に涙がこぼれてきた。私…なにやってんだろう。
とめどなく溢れる涙は、もう自分じゃ止められなかった。
「…うぅ…っ…グスン…」
そんな時、後ろから聞こえた声に身体が硬直した。
「…っ中村!?久しぶりって…なに泣いてんの!?!?」
それは、大好きな達也の声だった。
ドクンドクン
急に涙がひいてきて、心臓がこわれるくらいに激しく脈をうちはじめた。
ほら…こんなに好きなんじゃんよ。言わなきゃ…
今言わないでどうするの?
これは神様がくれたチャンス。
私は手をギュッとにぎりしめて大きく息をすった。
「…私…」
そうだよ、言える時は、今しかないのだから。