日向子と僕が付き合い出したのは、丁度二年前の今頃だった。大学のコンパで知り合って、日向子に一目惚れした僕からデートに誘った。初デートは、貧乏学生らしく安い鉄板焼き屋だったのを覚えている。
付き合い始めた頃はとにかく毎日が幸せで、日向子と別れて家に帰ってからもずっと日向子の事を考えていた。眠りについてもこのまま日向子とずっと一緒にいられたらいいな、と幸せそうに笑う二人の未来を夢にまで描いていた。
「愛してるよ…日向子」何万回ささやいただろう?今ではとても懐かしい響きだ。
時が経つにつれ、お互いに就職活動や論文などで忙しくなり、少しずつ何かがずれ始めた。
僕は幼い頃からの夢であった建築関係の仕事に内定が決まり、作図の勉強に没頭していった。また、日向子はなかなか内定が貰えずに就職活動に明け暮れる毎日だった。 日向子は、活動の合間に僕のところへ差し入れを持ってきてくれたり、ご飯を作りにきてくれたりと僕にとても尽くしてくれた。今考えると、日向子は僕の心の小さな変化に気がついていたのかも知れない。そして、それを必死に元に戻そうとしていたのだろう。