[翔ちゃん、私…ふられちゃった…協力してくれてありがとね。ごめんね…。]
俺は、手紙を落としそうになるくらい、全身の力が抜けていくのを感じた。
だけど、心のどこかで喜んでいる自分がいた…
最低だ…俺…
昼休み、俺は導かれるように、屋上にむかった。
案の定、沙恵が座り込んでいた。
「………沙恵?」
「…翔ちゃん……」
振り向いたその顔は、涙でぬれていて、心がしめつけられた。
「ぁたし…ふられちゃったよぅ…」
涙を拭くこともせず、ポロポロこぼす姿が無性に悔しかった。
「沙恵………」
抱きしめたい衝動…好きだと伝えたい衝動…全てが俺を駆り立てる…
けど、そんな想いも、沙恵が放った言葉によって、簡単に壊れた。
「けど、私、諦めないから!」
涙の中の笑顔がまぶしかった。
「沙恵……!」
「緑川君が大好きです―――!!!」
空に向かって沙恵は叫んだ。その言葉は、こだまして、やがて消えた。
気づけば、俺の中のもどかしい想いも消えていた。
「……クス……」
ウジウジしてる自分がバカみたいだった。やけに、笑いたくなった。
「沙恵…最高…!」
沙恵の頭をクシャっとしながら笑顔で言った。
おまえが笑顔になれるなら、それでいいわ、俺。おまえが翔ちゃんって言ってくれりゃ、かまわねーよ。
大好き…沙恵…
fin....