「俺、チョコ嫌いなんだよなぁ…」
何年か前にあなたが言った言葉。今も、胸に焼き付いているの…。
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「あっ……宍戸!」
街角で、偶然愛しい人に出会った。
「おぉ、浅井!何してんだ……?」
「明日バレンタインじゃん?その材料買いに…」
「おぅ、そっか…!」
本当にあげたいのは、あなたなのに…やっぱり気づいていないんだね。
「宍戸…今年もいっぱいもらうんじゃない?」
ちょっと皮肉混じりな言葉。だけど、悪気はない。
「そぅか?まぁ…俺、チョコ嫌いだからさ…」
無意識ときた。いるよね…自分がもててるって気づいていない人…
「そっか…甘いものダメだもんね…そうだよね…」
「おぅ。じゃあ、また明日、学校でな!」
「うん…!バイバイ……!」
ちょっとショックだけど、仕方ない。私は笑顔で見送った。
「さぁーて………」
とりあえず、板チョコ売場まで来た。お父さんの分と、弟の分のチョコをかごに入れる…
「宍戸………」
一番あげたい人に、あげる前から、こんな風になっちゃうなんてね…宍戸…
「…………」
しばらく躊躇ったあと、私は宍戸の分の板チョコを、かごに入れた。