心配そうに見つめてくる彼女を見つめ返すように、俺もまた彼女を見据える。
長そうな髪を上で結(ゆ)わえ、つぶらな瞳をした、純真で朗(ほが)らかそうな女の子だ。
少々、武道をやっているようにみえるが、まさか…‥
[男]「こんな“お嬢ちゃん”にブッ倒されるとはな‥‥」
純真で朗らか。というより、………お子様だ。
遊園地とか似合いそうなぐらい、お子様だ。
俺が自嘲しながらガキんちょを見る様な目を向けると、麗遊は「ムゥッ」といった風に顔を膨らませ――
[麗遊]「気にしてるのに!私、女子大生だよ!?“お嬢ちゃん”じゃないよぅ…‥」
――胸元に両拳を掲げ、少しウルッていた。
言われて目線を下に降ろす。
あ、本当だ。
[男]「…‥んッ?」
何故か違和感を感じる。
容貌と身体が合ってない、ッて意味じゃない。
あどけない女の子には似合わない
・・・・・・
異様な雰囲気を感じる。
例えるならコッチ側。
裏に住む闇の匂い。それに……
俺と同じ、気配?、懐かしさ?、がする。
[麗遊]「やっぱり、まだ痛かった?」
[男]「あ、イヤ…」
俺の様子が変わったのに気付いたのか、再び憂慮(ゆうりょ)に満ちた表情になり「大丈夫?」と、首に触れようと…‥
ゾクッ…
[男]「!?!」
[麗遊]「ぇ!?」
突然二人は弾かれたように離れた。
いや、男が一方的に距離をとった。彼女に対して身構えてさえいる。
麗遊はビクつきながら戸惑い、また涙目になっていた。
[男]「嬢ちゃんそのグローブ!もしかしてッ!?」
白く繊細な肌に映える、黒く粗暴なグローブ。
彼女に殺意や敵意が無いと分かっていても感じる、戦慄と冷や汗。
体中の温かい血液全部を冷水に入れ換えられたような悪寒。
間違い無い!アレは!!
[稲田]「《神のシナリオ》の一つ」
[男]「ッッッ!!」
愕然と驚愕の顔を向ける俺に、稲田はさらに続けた。
[稲田]「【The roaring in Abyss】【深淵における咆哮】……、破棄者に。天女様があなたに依頼した品です」
淡々と述べる稲田に、俺は絶句して応えるしかなかった。
[稲田]「お嬢さん…‥」
[麗遊]「は、はい!」
静かに呼ばれ、いけない事しちゃったのかなぁ…と、思った麗遊は上擦った声で応えた。
[稲田]「少し‥お話でも…」
…続きます