その日の朝を境に、弟はしきりに「5月19日」と口ずさむようになっていた。
5月19日に何があるのか。あたしにはさっぱり分からず、仕方なく母親に訊いてみた。
弟の話し相手を毎日している母なら、知ってるはずだろう。
「5月19日?」
「うん、あの子いつも言ってるんだけど」
夕飯の支度時、それとなく尋ねてみると、母は今まで見せなかったような顔で驚愕した。
「…何かあるの?」
「…え、いや、何も」
そう言って母は苦笑いをし、ふと止めた支度の手を進めた。
…何かおかしい。
あたしは母に頼らず、日にちしか言わない弟の言葉を、調べる事にした。