死神はターゲットの周りをくるくると回っていた。
性格、今までの人生、やり残している事。死神にはすべてが見えた。
死神も悪魔ではない。その人に見合った死に方をさせるのが使命だ。というより上から許可がおりないのだ。
今回のターゲットを見て死神は「こいつは普通の殺し方が妥当だな」と考えた。
死神にとっては残酷な殺し方ができればできるほど楽しいのだが仕方ない。
当のターゲットはというと―携帯をカチカチといじっていて、自分が危険にさらされている事にまったく気づいていない。
―気楽なものだ。
死神はターゲットに冷たい視線をそそぐと、次に微笑み、呟いた。
「決めた」
―こいつは交通事故で殺そう。そうだな…まあ普通車くらいでいいだろう。ダンプカーでぐっちゃり頭を潰した方がより気持ちが良いのだが―仕方ない。
次のターゲットは絶対に頭潰しの許可が出るような奴にしよう―。
死神はそう決心すると、さっさと今回のターゲットを殺してしまう事にした。
外に行かせなければ―。
ターゲットはまだ携帯をいじっていて外に出る気配はない。
―これから死ぬっていうのに何をしてるんだ。
死神はヒョイと携帯を覗いた。どうやら小説を読んでいるようだ。
「…何」
その小説には死神の行動がすべて書かれていた。もちろん今の呟きも。
ターゲットは少し表情を変える。
―無理だな。
そう判断した死神は、フッと姿を消した。
ターゲットはこの小説の展開に一瞬考える。―が、ありえない。という考えにたどり着き、その小説に別れを告げた。