もうあれから15年経つのね。あなたとの思い出が詰まったアパートも公園も、銭湯も…全て変わってしまったわ。
彼女が塀の中にいた15年の間に街には高いビルが建ち、街の雰囲気はがらりと変わっていた。
ただ一つだけ、変わらない物は、この空の色だけだった。
「はぁ…」
彼女は空を見上げながらため息をついた。
その時だった。近くでドサッと荷物を落とす音がした。
「……あんた……もしかして、さっちゃんかぃ?……」
声のした方を振り向くと老女が1人、青い顔をして立っていた。
「大家さん…」
「あんた…人を殺しておいてよくこの町にもどってこれたなぁ」
老女は叫ぶように言った。
彼女は、うすら笑みを浮かべて答えた。
「…私は彼を殺したことを後悔してません。彼は…彼は私だけのものになりました…私だけのものに」
老女は、後ずさりして逃げるように去っていった。
後には、老女の落とした荷物だけが残っていた。