西暦20ΧΧ年・東京都Z区立第一中学校―\r
『くくくっ…ふふっ…ふあっははは、終りだ!』
生徒会長室では、カーペットに膝まづいて一人の男子生徒が狂笑していた。
涙を流しながら―\r
第一中学校生徒会長太田カツヒロだ。
『そうさ。おれはハメられたんだ。梅城ケンヤに―ひひひ』
名ばかりの生徒会長―\r
お飾りだけの植民地の主―\r
彼は先日梅城ケンヤの命令に従って、自分の女子生徒三人を《いけにえ》に差し出したばかりだ。
『そうさ―してやられたのさ―俺は馬鹿だ!生徒会長にしてやるとの甘言を真に受けて今は―このザマだ―ははっ』
太田カツヒロは当然ながら自己嫌悪に苦しんだ。
だが―手遅れだ。
『俺は卑怯者だ!例えイジメグループでも自校の生徒を見捨てたのだからな―他者の利益のために!』
そうだ。
梅城ケンヤは口実が欲しかったのだ。
校内全体、ひいては改革派同盟を取りまとめ、大規模な戦争を引き起こすための大義名分が―\r
太田カツヒロはそれに加担した。
より正確にはそうする様に強制されたのだ。
『俺は―俺は共犯者だ―勝っても負けても大勢の生徒が死ぬ!くくく…もうこれで―日本屈指の犯罪者確定だ!もうまともな人生は―生きられないさ!!!あはは…あっはは!!あーっはっはっは!!!』
立ち上がり、頭を抱えながら哄笑する太田カツヒロの背後で、雷鳴が轟く。
曇空は一転、夕立と化し荒れに荒れた―\r
『太田会長―第三中学校では生徒総会が始まりました』
そこへ、多機能ゴーグルをかけたまんまの副会長・エウフセラ=ナールマンが入って来た。
そうだ―\r
もう後には引けない―\r
今逃げたら俺は裏切り者だ。
生徒会長の地位を失う。
この学校は討伐される。
そして何より―俺の命が危ない。
『エウフセラ―ここの会長は誰だ?』
『それは貴方です。太田会長』
副会長の素っ気ない返答に、しかし太田カツヒロは別な何かを見い出し、満足気ににやついた。
そうだよ。
俺は卑怯者だ。
卑屈な男だ。
汚く愚かで、しかも欲深いと来たもんだ。
しかも、我が身が可愛くて仕方がない。
だったら―\r
徹底的につらいぬいてやろうじゃないか!
太田カツヒロが会長卓に座ると、深まる暗闇の中、雷光が鮮烈にきらめいた。