そうして私は眠れなくなった。
別にあの人のことを考えようとしているわけではないのに。嫌なとこもいっぱいあったはずなのに。思い出されるのはいいとこばかりだった。あったかくて大きな手とか。寂しい時に抱きしめてくれたこととか。手を繋ぐと何よりもホッとしたこととか。幸せな思い出は心地よくて、悲しいのに思い出さずにはいられない。
愛のために死ぬ人がいる。失われた愛のために。自分には絶対ありえないと思っていたけど…
今なら分かる。人は愛のために生きて、愛のために死ぬんだ。想いの重さに苦しみながら、愛の欠如に絶望しながら、生きることにウンザリするんだ。
別の誰かを愛することは、もうないように思う。
また誰かに心を動かされることはないように思える。また同じ想いを繰り返すのなら、干からびた人生を選ぼう。長くて穏やかな夜を選んで、短い朝を待とう。
彼に会う夢を見た。