朝は苦手だ。
自分は寝付きが悪いし、低血圧でもあるので、目覚めには格別の苦痛を感じる。
目覚まし時計がその特有の、耳に障る電子音を放つ度、堪えようのない嫌悪感に包まれる。
そんな始まりで一日が快適の訳もない。
このままではよろしくないと、自分なりに様々な手を打ってはみたが、そのいずれも芳しいとは言い難い結果に終わっている。
きっと自分は目覚めたくないのだ。
意識というものを黒一色に染め上げ、理性も倫理も介在する余地がない、睡眠という自意識及び実社会との断絶行為が好きなんだろう。
程度の差こそあれ、眠る生き物であれば必ずこのように感じるのではなかろうか?
そんな自分だが、今日は早起きをした。
理由はない。本当に偶然、いつもは布団の中でギリギリまでまどろんでいる時間を返上して起き出したのだ。
朝飯を食べた。
普段は起きぬけなので体が食い物を受け付けないが、今日はいつもより血の通いがいいのですんなり腹に収めることが出来た。
便通にも苦労がなかった。普段はそもそも、便意すら覚えないこともある。
寝癖を直した。普段にそんな余裕はない。
そんな取るに足らない、けれども決して無価値ではないこと。
ほんの少し、笑みが漏れた。
勿論、意識して行動しない限り、自分は明日も時間一杯まで眠るだろう。