【2回裏】
『ストライ〜ク!バッターアウッ!!』
相手の1番冴木のバットが空を切り、幸先よく1ナウトをとった。
俺はショートからその光景を目の当たりにしていた。
ショウが最後に投げた球はおそらく「シュート」だろう。
左バッターの真ん中から外に逃げていった球。
それにしてもストレートと間違えるほどの球速差のない高速シュートだった。
カズマが『1ナウト〜!』と叫ぶ。
合宿中に練習していたのはアレだったのかぁ!と俺は感心した。
そんな八神をよそに、ネクストサークルでは早くもバッテリーの秘策の正体を見破ろうとしている男がいた…
辻村昴(ツジムラスバル)
天豪三のセカンド、そして2番打者。守備上手さ、打撃の巧みさで現在の位置を確立した。
また、相手投手も冷静に見る目がある。理想的な2番打者だ。
その辻村が、
(ミートの上手い冴木が簡単に三振するとは…
あの速球、通常の真直ぐよりやや遅い感じだな…外に逃げていく球…おそらくシュートか!?)
こんな予想を立てていた。
また、天豪三中ベンチでも三振した冴木がナイン達に
『相手ピッチャー、おそらくシュートも投げてくるぞ!』
と説明していた。
早くも秘策が明らかになってしまった藤城バッテリーだったが、先頭を三振にとった事により勢いに乗っていた。
そして、2番辻村が打席に入る。
主審『プレイ!!』
天堂寺が振りかぶる。
初球。
不破は今度は初球からシュートを投げさせた。
これに、辻村も冴木と同様、シュートをストレートと勘違いしてしまった…
ガキッ…
右打者には内角にえぐるようなシュート。
打球は詰まってサードゴロ。
不破『サードっ!!』
リュウヤがダッシュする!
ゆっくりボールを拾い、丁寧に送球した。
『アウト!!』
バッテリーの秘策、「シュート」
天豪三中には効果的に作用していた。