未来へ‥
「よお、あれ以来だな、晋達とは」
林白龍(りんぱいろん)の明るい声が辺りに響いていた。
先の戦いの後、山際晋、林白龍、村山剛の三人が揃うのは珍しい事である。
「ふふ、あの獰猛なお姫様が心配なんだよな?晋」
村山剛がからかう様に言うのへ、晋は苦笑しながら答える。
「いやぁ …子供たちの前では勘弁してくれよ、イーズのお守りは劉さんに任せてあるしさ」
三人はそれぞれ数名の少年達を伴って、段英子(たんいーず)の率いていた集落へと向かっていた。
「おーい! 遊びに来たぞ〜っ」
不動妙王を思わせるような強面(こわもて)の巨漢に、晋たちが手を振っている。
男は、かつて晋達と戦った事のある劉源治であった。
劉は一抱え程の丸太を担ぎ、運ぶ途中だった様子で、傍らには小学生ほどの男の子達が小枝を束ねる作業をしていた。
「お、孫悟空一行のおでましか」
そう言って破顔した劉源治は、担いでいた丸太を軽く放る。
ズシインッ! と地響きを伴い地にめり込む丸太を打ち捨てて、劉は子供たちに先に戻るようにと声をかけていた。
「みんな、来てくれてうれしいよ!」
弾ける様な勢いで迎えに走り出てきたイーズの後から、子供たちを連れた美奈と由紀、響子が笑顔を見せる。
「劉のおっさん、ヒトを猿呼ばわりすんの止めてくれよな」
「いやいや、これでも誉めてるつもりだが」
小柄なリンと巨体の劉のやりとりに、部屋の中は明るい笑いに満ちている。
「鬼島のオヤジは、最近大人しくなったのか?」
「ああ、うちの悪戯っ子たちに棒術のてほどきしてるよ。 油断すると打ちかかってくるけど」
劉源治の問いに、村山剛は走り回る子供達に視線を向けながら答えていた。
「ま、生き延びた者同士が争うなんて愚かな事だよ。 僕達は全てを失ったけど、この子達にはこれから未来を築いてもらわなくっちゃね」
山際晋は、そう言うと横にいた少年の背中をぽんと叩いた。
終わり