5月19日。
別に誰かの誕生日でもない。
けれど確かに、弟は言い続けていた。
むしろ、訴えかけていた。
「ねぇ、その日に何があるの?」
そう訊いても弟は、具体的な言葉を話す事は出来ない。
母が使っている机の引き出し。
その奥に、まだ父と恋人同士だった頃の母の日記がある。
あたしは何故かそれが気になって、久しぶりにページを開いた。
5月19日。
その日、若き母が書いたものは、とても不思議なものだった。