少し時は戻って七回表東谷学園のベンチにて。
「なあ、五十嵐。」
凡退で帰って来たばかりの桃木が聞いた。
「ん〜?」
桃木は観戦席の方向を指差し、
「あそこにいる奴、誰だろうな。俺達の学校の制服を着てるぜ。」
五十嵐は桃木の指をさした方向を見た。
しばらくすると五十嵐は「ああ」と言って
「神谷、だったかな。俺と一緒のクラスの。」
すると後ろにいた古谷がカッと目を開き
「神谷?!」
「ど、どうしたんすか!監督?!」
桃木の言葉に古谷はハッ、と我にかえり
「い、いや、なんでもない。」
打球は強いゴロになって一塁線に転がっていった。
(当たった?!)
・・・がそのボールを赤池が素手でつかみかかろうとしていた。
「走れぇー!」
桃木が叫んだ。
が。
「アウト!」
間一髪で送球が間に合ってアウトになってしまった。「あー、残念でしたね監督。」
桃木は悔しそうに言ったが古谷からの返事がなかった。
「・・・監督?」
「あ、ああ残念だったな。」
「はぁ・・・?」
桃木は首を傾げたままだった。