第1話 次元の間
だんだん暖かくなってきた春頃、またある市の職員が汚職事件を起こした。
これで今年3件目だった。「またかよ。どいつもこいつも。世の中腐った野郎ばっかだ。」
彼の名はベル。
今の世界事情を嘆く高校生で、政治等に興味を持っている。
彼の政治に対する情熱は素晴らしいものであり、時には、番組のコメンテーターさえも一刀両断するほどだった。
市の職員が逮捕された日と同じ日、ベルは、自宅の庭で掃除をしていた。
そして庭の端を掃除していた時、マンホールほどの大きさの穴を見つけた。
すると、足を滑らせて、穴に落ちてしまった。
「うぁっ!」と、声をあげたと同時に腰を打ち付けた。
「何だよ!むかつくな!ついてねーな。」と、ベルが愚痴をこぼしていると、どこからか声がした。
『人よ。人よ。歴史を変えたいと強く願う者よ。』
この声はベルにも聞こえていた。
ベルは言った。
「お、俺に言ってるのか?」
『そう、おぬしだ。』
その声の主は続けた。
『我の名はラーニャ。』
「ち、ちょっと待てよ!おまえなんなんだよ。それになんのために・・・」
ベルがそう言い終わる前にラーニャは言った。
『我は時空の番人。そして、おぬしを案内しに来た。』
ベルは、ラーニャの言ってることが理解出来なかった。
突然穴の中に落ち、声が聞こえてきて、時空の番人が現れて・・・
ベルはラーニャに聞いた。
「案内するって、どこへ?」
ラーニャは答えた。
『過去へだ。今からおぬしには、過去へ行き、歴史を変えてもらう。』
(はぁ?)
ベルは首へを傾げた。
ベルがそう思うのも無理はない。
過去に戻るなんて現実的に不可能なことである。そして、恐る恐るベルはラーニャに聞いた。
「何故俺が?」
そうすると、驚きの答えが返ってきた。
『おぬしが歴史を変えたいと強く願っているからだ。』
ベルは驚いた。
今の世の中をどうにかしたいと思ったことはあるが、過去へ行って歴史を変えてみたいと思ったことは、なかったからである。
ベルは言った。
「本当にそんなことが出来るなら、興味がある。で、本当にそんなこと出来るのか?」
『おぬしが願うなら。』
ベルは考えた。歴史を変えれば、今の世の中も変わるかもしれないと。ベルの決断はすぐにでた。
「過去に行きます。」