《同日午後3時・東京都Z区立第三中学校生徒総会》
『今回私は君達に重大な提案をしなければなりません』
体育館に一同に会する全校生徒1000人に向けて、生徒会長・梅城ケンヤは演壇から語りかけた。
『我が同盟校の女子生徒三人が、Y区の不良校に拉致され、彼らの根城に監禁された事件は既にご存知かと思います』
梅城ケンヤのそれは計画の一部だった。
『これに対して当局は《学校内司法自治全権委任法》を口実に実質捜査を放棄―責任を全て我々学校・生徒会に押し付けて来ました』
それは梅城ケンヤの望んだシナリオであった。
『これに対し、第一中学校生徒会は我々に救援を要請して参りました―彼らは我々の盟友であり、拉致された三人の女子生徒は言わば我々の同胞なのです―その同胞を救い、諸悪に立ち向かうべく私はみなさんの力をお借りしたい』
ざわめきが高まる中で梅城ケンヤは宣言した。
『第一中学校及びその女子生徒達の救援作戦を動議します!』
だがそれは生徒達から満場の拍手をもって迎えられた訳ではなかった。
『梅城会長そんなヤツら放とけよ』
『そんなヤツら何かにわざわざ俺達が血を流す必要なんかないって』
『それにその女子生徒どもは札付きのイジメグループなんだろう?だったら向こうに拉致られたままで良いさ。処刑の手間が省ける』
『そうだそうだ。それに背後の穏健派が必ず隙をうかがってくるぜ』
『梅城会長!あんたは支持するが戦争には反対だ』
『一般市民に被害が及んだら取り返しがつかなくなる―戦争反対』
『あたしの彼氏を兵隊にさせたくない!戦争反対!』
戦争反対 戦争反対 戦争反対 戦争反対 戦争反対―\r
ごうごうたる抗議の嵐が体育館中を揺るがした。
しかし―梅城ケンヤは揺るがなかった。
『せいーしゅくにー!』
マイクを持った赤木が大声で呼び掛けてそのうなりを止めさせると、梅城ケンヤは再び話し始めた。
『みなさん―私もみなさんと同じ気持ちです―出来れば戦争はしたくない。誰も戦地に送りたくない―私もそう考えていました―この惨劇を見せ付けられるまでは』
そして、梅城ケンヤが右手を挙げるといきなり体育館の照明が落ち、一斉にカーテンが閉められ、演壇の後ろにスクリーンがするすると下ろされた。