壁を叩く音が室内に響き渡った。一瞬体がびくついたが、体勢を立て直して先生を見つめる。
先生はバツが悪そうに下唇を噛んでいた。
「悪い…」そう呟いて私に背を向けた。でもすぐに振り向き…「誰のモノにもなるな」
私は抱き締められていた。力強くて、息苦しくて。それでも割と幸せだった。妙な感覚に、鼓動が高鳴る。
「我が儘ですね、先生」嫌味でそうは言ったものの反応がない。…そういえば私この人に腹が立ってたんだよね。私は馬鹿だから、すぐにイライラしてた事を忘れてしまう。まぁそれだけこの人に『堕ちている』という事なんだけれど…