「―――――被害者は40代から50代の男性、額を銃で撃たれてる。即死だ。」
朝6時から忙しく歩き回る警察、昨夜降った雨をキラキラと輝かせる朝日、雨に濡れた死体。
いつもは閑散としている住宅街に野次馬が集まっている。
「朝倉さん!」
水たまりにも気にせず若い警官が走ってきた。初めての殺人事件で張り切っているようだ。
「どうした深野?」
無精髭の男はボリボリと頭をかきながらタバコをふかしている。
「凶器のほうは銃で間違いないと思うんですが…」
深野は言葉を詰まらせた。
「弾がまだ見つからないんです。貫通してないのでまだ体内に残っているか近くに落ちていると思うんですが…」
朝倉はタバコを落とすと地面に擦り込むように踏みつけた。
ジャリジャリ、ジャリジャリ…
ジャリジャリ
タバコの吸い殻は濡れた地面に溶け込むほどに原型を留めずじんわりと路面に吸い込まれる。
「深野、吸い殻は捨ててもいいがこのぐらいになるまでくちゃくちゃにしろ。そしたら風に吹き飛ばされるか地面に…」
「朝倉さん!弾が無いんです!」
深野は痺れを切らし大声を出した。
「そうか、じゃあ『四大未解決事件』になるなぁ」
朝倉はのん気に笑い出した。
「朝倉さん!笑い事じゃないですよ!その事件を解決しなきゃいけないのは僕たち警察なんですよ!」
結局この後『四大未解決事件』になってしまうのだが…この事件を含め、『黒ウサギ』『人食い男』『神の集団』と称された4つの事件がこれから警察組織を悩ませることになる。深野がムキになるのも無理はない。
「まぁまぁ怒るなって、額の傷を見た感じ弾は9?パラベラム。見た感じだがな」
そう言いながら朝倉は2本目のタバコに火をつけた。