AM3:24
私は帰り道を急ぐ。
いつもの帰り道もこんな夜更けでは気味悪く見える。
残業が長引き気付けばこんな時間…。
早く寝たい。
後200メートルでマンションに着く頃に、私はあるアパートの一室に目を向けた。
窓から誰かがコチラを見ている。部屋の明かりもつけずに。
気持ち悪い…。
そう思ったものの、気になりまた目を向けた。
コチラを見ているのはオカッパ頭の女の子だった。
子供かぁ…?
少しホッとする。
きっと眠れずに窓の外を眺めているのだろう。
私はそのままアパートを通り過ぎ帰った。
次の日の帰り道。また何となくアパートを見上げると、また女の子が窓からコチラを眺めていた。
あれ?まだ7時なのに明かり消してる…。
親がまだ帰ってきてないのかな?
丁度夕飯時。周りの家々は賑やかに夕食を囲んだりしているのに、その女の子は真っ暗な部屋から外を眺めている。
可愛いそうに…。
私は何となくその子に手を振ってみることにした。
小さく手を振った。
女の子は私に気付き、ニコリと笑って手を振り返した。
その日から私はそのアパートの前を通る時には、女の子に手を振る事にした。
女の子は毎日暗い部屋から嬉しそうに笑って手を振り返していた。
ある日の事。いつもの様に手を振っていると、女の子は突然窓を開けた。
「お〜い!!今からそっち行くぞぉ〜!!」
えっっ!
今の声は明かに女の子の声ではなかった。50代のオヤジの声だった。
気が付くと女の子は窓の所から居なくなっていた。
ヤバイ!
こっち来るかも!
私は全力疾走でマンションへ帰った。
その日から何だか怖くて、アパートの道を避けて遠回りして帰る事にした。
私のマンションの隣人のオバサンにその事を話すと、あのアパートの部屋には女の子ではなく精神病を患ったオカッパ頭のおじさんが家族から隔離されている事を教えてくれた。
私はゾットした…。
今まで私はおじさんに手を振っていたのか…。
しかし本当の恐怖はこれからだった。