恋愛臆病者?

爽香  2008-02-17投稿
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"もう恋なんてしない。"
いや、こんなありきたりな台詞では済まされない程、深月(みづき)は恋愛にうんざりしていた。
そう、今の深月に相応しい言葉を、深月は呟いた。

「もう男なんて要らない。」

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「お母さん、深月は?」
慌ただしく帰宅してリビングに顔を出した深雪は、こたつで雑誌を読む郁子に問いかけた。郁子は、呆れたように溜息を一つつくと、
「またいつもの病気よ。」と、煎餅を頬張った。それを聞いた深雪も母に続いて溜息を漏らし、深月の部屋へと向かった。

「深月、入るわよ。」
深雪がドアを開けると、ベッドの布団がこんもり膨らんでいた。
「深花(みか)のお迎えに行ってほしいんだけど。」
「…なんで?今日お姉ちゃん帰り早いじゃん。」
布団にうずくまったまま、深月はぼそぼそと小声で答える。
「今から着替えて、重要な取引先のご親族のお通夜に行かなきゃならないのよ。」
娘の深花を抱え、シングルマザーでありながらも広告代理店の営業として第一線で活躍する仕事熱心な姉・深雪。
「…お母さんは?」
「今日は、ダンス仲間とお食事って言ってたじゃない。」
短時間のパートと、趣味の社交ダンスで日々充実しているお気楽な母・郁子。
「深月しかいないのよ。」
「……。」
そして、フリーターで仕事も安定してない上に、今は、恋愛の痛手で精神的にも不安定な深月であった。
深雪は、深月の側まで寄って行った。
「今回は何?騙された?遊ばれた?裏切られた?」
「お姉ちゃん、どれも同じような意味だと思うんですけど…。」
布団の中から暗い声で突っ込む深月。
「そ、そう?…まぁ、深月の恋愛の一連に関しては、お姉ちゃんが一番わかってるからさ。もう、何度あんたの涙を見てきたと思ってるの?」
「……。」
「話なら聞くからさ、後でゆっくり飲みにでも行こうよ!」
そう言って深雪は布団の上から深月をポンポンと叩くと、突然、深月が起き上がった。
「お姉ちゃん…。」
妹を励ます姉の優しい言葉に感動して、深月のとうに腫れていた瞳から涙が溢れ出た。そんな深月に、深雪が笑顔で一言。
「だから、深花のお迎えよろしくネ。」
深月は、一瞬にして嫌々な顔付きになったが、この深花のお迎えがこの後の深月を変える出来事に繋がろうとは、この時は、まだ誰にもわかるはずのないことであった。

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