その時、突然電車が止まった。
ギギーッッッ!!!!シューー…!!!
満員電車の人はそわそわし始める。
『んだよ…次の駅のホーム見えてんのに』
『事故かな?』
『やばー門限間に合わないですケド…』
『マジ?ヤバくない?』
『へ?事故?』
独り言、相手がいる人はおしゃべり。様々だった。
『お急ぎの所大変申し訳ございませんー。只今ホームで物が落ちたと、連絡があり確認の停車です。お急ぎの所大変申し訳ございません。確定終了後運転を開始致します。繰り返し……』
事故じゃないのか。まあよくある事だと、思いながら私は人の隙間から外を見ていた。
『ねぇ〜。こういうのよくあるのぉ〜?』
女の猫なで声が聞こえた。よくもまぁこんなに媚びた声が出せるものだ。
『まぁ…たまにな。静かにしろよ、お前さぁ。』猫なで声への返答は分別のある男性の声だった。
いつもなら満員電車の他人のおしゃべりなんて無視する。けれど今日は違った。
動かない景色が退屈で、少し身体を反対側へずらし同世代のいちゃつくカップルの顔でも拝んでやろうと思ったのだ。