しかし、振り向いた瞬間。
私は凍りついた…。大袈裟な表現かもしれないけれど、頭痛の時のようなこめかみを突き刺す感覚が一瞬全身に貫いた。
「梨乃…。」
誰にも聞き取れない程の呟きを漏らした。
という事はもしかして、連れの男性は…。
『海斗の住む街まであと15分くらい?だっけか?久しぶりだなぁ〜。』
『そうだな3ヶ月ぶり。梨乃よく休暇とれたなぁ。しかも急だからびびったぞ。』
「うそ…。海斗…が?」
再び囁き程度の独り言を呟いてしまう。
同時に被っていたニット帽を深めに被り直して、2人に背を向けた。
なんで?海斗と梨乃がこの電車に?
海斗は県内に、梨乃は地元に就職したんじゃなかったっけ?