「月軍……」
上空高く、そこでは数十機ものWWがハル達に敵意を向けていた。
(お、応戦する!)
狩野が檄を飛ばしたが、ハルの耳には入らなかった。
黒いのボディが反射する太陽はハルがそっとしておいた心のカサブタをジリジリと焦がし、剥がした。
同時に、凝固させて直視しなかった記憶がどくどくと音を立てて流れだす。
薄れる意識の中で聞いた沢山の人の呻き声と唸り声。
暗闇に点々と垂れ込む夜空に浮かんだ紅い月。
暗黒の中で唯一感じた温もりと吐息。
擦れて消えてしまいそうなすすり泣き。
そして、無。
「ウあァァァ!!!!」
ハルは零を戦闘機に変形。群れの中心目がけて突撃していった。
(待て!10…号……卯月ハ……プッ……)
ハルは通信回線のスイッチを殴るように乱暴に切った。