宗太は倒れた少女を抱きかかえソファーに寝かすと少女の着ているびしょ濡れの服を脱がそうとした。
「…おい…!お前何やってんの!?」
宗太のその行為を見て京介が慌てて止めに入った。
「え?いや、風邪ひくかなって思って」
当然のように話す宗太を見て京介はあきれかえる。
「普通脱がすか!?いくらガキでも一応女だろ」
宗太は何を言っているんだと言わんばかりに両手を広げた。
「まさかこんな子供の体見て興奮しちゃうの?……あ…そうか分かった。じゃあ京介さんご希望の放置プレイってことで」
「アホか!もし訴えられたらどうすんだよ!」
宗太と京介はお笑いでいうボケとツッコミの関係だ。もっとも宗太はボケというより天然にちかい。
「…う…ん……」
そんなやりとりをしているうちに少女はうめき声をあげながら体を起こした。
「お、気がついたようだな。気分はどうだ?寒くないか?最初に言っとくけど俺らは何も手をつけてないからな」
京介はそう言うと少女の目線に合わせて腰を下ろした。
「………」
「あぁ…えーっと…家はどこ?もしかして家出とか?」
いつもの低く迫力のある声をできるだけ抑えて京介なりに優しく聞いた。
だが少女は首を傾げるだけでただ不思議そうに2人を見ている。
「おーい、家はどこ?」
もう一度聞いてみる。
「…家…?…分からない」
少女はまた首を傾げる。
「いいんだよ。今日からここが君の家だ」
「余計な事言うなよ宗太。お前はあっち行ってろ」
軽く叱られた宗太はつまらなそうに少女の向かい側のソファーに座った。
それからいくつか質問をしたが少女はどの質問にも「分からない」と答えるだけで分かったのは名前が「優」ということだけ、いくつか質問することで京介はある結論に達した。
「宗太、この子記憶喪失ってやつかも」
それを聞いた宗太はなぜか嬉しそうにソファーから立ち上がった。
「マジで!?ナマ記憶喪失!?これは貴重な経験だぞ京介!」
宗太は無表情の優の顔を興味深そうに指でつんつんとつつき始めた。
「あんまりつつくなって、とりあえず明日学校休んで病院だ。緊急事態だ。サボりじゃないからな。」
「よーし次は両手つんつんだ!」
「ちゃんと話聞いてた宗太?」
その後優はすぐに寝つき宗太のつんつんで優が起こされた事を除けば何事もなく朝をむかえた。