痛みはあまり感じなかった。
きっと感覚が無くなってたんだと思う。
義母は強く握り締められた拳をあたしに近づける。
もう既に、あたしは逃げる気力も体力も無かった。
もし、気力と体力があったとしても、動かないと思うけれど。
殴られたのは数年前だった。
何故殴られるのかは判らない。判りたくもない。
ただ、殴られるのはそこまで苦痛じゃなかった。
殴られる事で、あたしはあたしの存在を実感出来るから。
ふと、上を見上げると、もうそこに義母の拳があった。
そしてその拳は、あたしの右頬に見事に当たった。