「お兄ちゃん!ウサギさんだよ!」
そう言って少女は緑色の金網に指をつっこみ目を輝かせる。
そんな妹を優しい目で見つめている兄、「おいで」と言って妹の手をとった。
とても愛おしい…家族は妹だけ、人なつっこくて誰にでも優しい。でもときどき僕が狂ったように怒りだすと君はおびえて涙を流していた。
僕は施設の人にときどき病院につれていかれた。薬も飲まされた。精神的にどこかおかしい、それは自分でも分かっていた。
5年後、中学生になった君は友達もたくさんできて僕と遊ぶことが少なくなった。僕には相変わらず君しかいない。だから少し寂しい。それでも君はいつもの愛おしい笑顔で僕に話しかけてくれる。こんなぼろぼろでダメな兄貴なのに…
それから3年後、君は高校生になった。可愛らしかった君は少し大人になりとても綺麗に……美人になっていた。
そのころ初めて彼氏ができたって嬉しそうに話してくれた。
でも僕は嬉しくなかった。1人になってしまう。…そんな気がしたから…
彼氏ができて3ヶ月後、突然の電話で僕は狂ったように施設を飛び出した。
いつも優しくて温かい君は冷たくなっていた。
警察の話しがあまり耳に入ってこない。強姦…?男子高生…?
2月の寒い夜に…汚されて…裸のまま捨てられて…かわいそうに…
僕は悲鳴をあげながら外へと駆け出した。
外へ飛び出したのはいいけど、何するんだっけ?…混乱してる。…狂ってる。それでも自分が何をしたいか…何となく分かる。
「殺す」