何時からだろう
僕がこの電車に乗り始めたのは
何も覚えて無い
ただ毎日乗って来る死者を見てるだけ たまに話し掛けられる
「坊や、何処からきたんだい?」
とか「あいつのせいで…。」
とかほとんどが自分の死に際を語ったり自分の自伝を語ったりしてる
僕は終点に着くと意識が飛び、また同じ電車に乗っている
今日は気分が良い
置いてあるコーヒーを啜りながら綺麗な景色を眺める
いつもの事だけど、なんか今日はいつもと変
乗客だ まだ四〜五歳の少年だった
少しスキップ気味で入り、座席に座った
僕の隣だ
僕は隣の人に一応話し掛けたりする
「何処からきたの?」
沈黙が広がる
「海」
いきなり言って来たので少し驚いた
「う…海ぃ…?」
聞き返すと悲しそうな顔で僕の方を向いた
「僕が悪いんだ……」
涙ぐんでいて声が震えていた
「どうして?」
「だって…僕がちゃんとママのいうことを聞いてたらこんな風にならなかったの…。」
恐らく溺死だろう 身体が濡れてる
「……………。」
僕はなんて声を掛けて良いのか分からなかった
「僕謝ってないから……ママに悪い事して謝ってないから……きっとママ怒ってる………。」
僕は励ましの言葉を掛けた
「そんな事はないさ、きっと君のママはとても悲しんでいるよ、それに多分自分に対して憎しみを抱いてる。」
「ほんと……?」
「ああ、なんであの時気付かなかったんだとか思ってるさ。」
少年は黙ってた
「…………どうすればいいの?」
「ママに伝えればいいのさ、コトバじゃなくて、ココロでね。」
「僕は大丈夫だよって…、伝えるんだ。」
少年の手を取る
「いいね?」
少年は涙を浮かべてうなずいた
あ…………
意識が飛び、始点に戻ってた
「はあ……。」
ため息が出た
「おい、手紙きてるぞ」
車掌さんが一通の手紙をくれた
はて…?中を開ける
「そっか………」
あの少年の手紙だ
今日も僕は死者を見届ける