その頃、沖田は荷物部屋の前で
おろおろ
していた。
みきを運び、寝かせたまではよかった。
「・・・」
降ろして、さぁ部屋を出ようと立ち上がった。
え
視界の端に何か写ったと、眼を落とすと
身体が固まってしまった。
「え、・・・え?!」
我が目を疑うしかなかった。
寝かせたはずの人の体がひとりでに
ふぅわり
持ち上がり、布団が滑り落ち、髪がほどけたかと思うと、
するん
と帯がほどけだした。
「ええ!!」
硬直する身体を何とか動かして、後ろ手に戸を開け、倒れ込む様な姿勢で飛び出した。
慌てて戸を
びしゃん
と閉めた。
心臓が口から転がりだしそうな位、激しく打ち鳴って、呼吸が乱れた。
「おい、どうした。」
顔を上げると、新八が近藤の部屋から出て来たところだった。
今にも泣き出しそうな沖田を見て
「ぉぃぉぃ。」
小声で近づいて来た。「どうした?」
と言うので、
そ
と、戸を開けて中を見せた。様子を見て新八は
ぎょ
として、
ぴしゃん
とまた閉めた。
「な、なんだありゃ。」
わかりません、と首を振った。
「また奴なんじゃ?」
「でも、あの嫌な感じも何もありませんよ。」
じゃぁ
「一体何だ?」
「それより、どうしましょう?このままだと、裸になっちゃいますよ。」
はん
と考えて新八が、
「何とかふんじばって抑えてこい。」
沖田の背中を押した。
「わ・・わ、わ、私は無理ですよ。」
背中を押しかえした。
「そんなら、俺の方が無理だ。あの娘に手ぇだすわけにいかねぇんだからよ。あんなもん目の前にしたらどうなるか・・・。」
とまた押した。
「そんな、私だってどうかなるのは嫌ですよ。」
おまえなら大丈夫だ
押し返そうとする沖田を、無理矢理部屋へ突き入れた。