「ちょっといいですかねぇ」
朝倉はずかずかと男に近づいていく。
男は優から手を離すと立ち上がった。
「こら、優ちゃん知らない男についていっちゃあダメだぞ」
朝倉はキャラとは違う雰囲気で優に話しかけた。
「ん〜ん知ってるよ。焼き肉屋のバイト君」
優はそう言って朝倉を見上げる。
「ほー…焼き肉屋の…バイト君ねぇ…」
朝倉は男の顔をまじまじと観察し始めた。
動揺を隠せない男に追い討ちをかけるように優は男に問いかけた。
「ねぇ、『一人一人』味が違うってどんな感じで違うの?」
「ほー…『一人一人』味が違う?どんな感じで?おじさんも知りたいなぁ」
朝倉は鼻息がかかるほどに男に言い寄った。
「知り合いから聞いた特徴にぴったりなんだなぁ…ちょっと…署のほうまでご同行願います。」
それを聞いた男は素早くポケットに手を突っ込むと何かを取り出した。
「逃げ回るのは得意らしいが取り調べでボロを出さない自信が無いって感じか?」
男は朝倉にナイフの刃先を向けた。
それを見た朝倉は躊躇することなく拳銃を取り出した。
「朝倉さん…!発砲許可はまだ…!」
それを聞いた朝倉は舌打ちをした。
「いいか深野?こいつが能力を持っていたら…拳銃なんかで勝てるか分かんねぇぞ」
男はゆっくりと横に揺れたかと思うと素早く朝倉に切りかかった。
パン!
乾いた銃声
2人の男から血が滴り落ちる。
「朝倉さん!」
朝倉は駆け寄る深野を制止した。
「腕をやられただけだ。だがあいつは右横腹に当たったはず」
そう言うと血が滴る右手から銃を落とした。
「く…!…くそ!痛ぇ…痛ぇ…卑怯だろ拳銃はよぉ!」
腹部を押さえて悶える男は朝倉を睨みつけた。
深野はそれを見て急いで銃を構えた。
「うっせぇ変態野郎、さっさとくたばっちまえ」
朝倉がそう吐き捨てると男は悔しそうにした。
「…でもあんたはもう銃を使えない…残るは能無しの新人だけだ…」
男はそう言うと銃を構える深野を背にし逃げ始めた。
「待て!」
深野は引き金を引こうとしたが手が震えてどうしても撃てない。銃すら撃てない自分に苛立ち深野は男を追いかけた。
「銃が撃てないなら追うな!」
その後深野はあまりの不甲斐なさに朝倉と目を合わせることができなかった。