俺にはずっと好きな奴がいた。
そいつは宇治原紗奈。
中学の入学式にあいつに一目惚れして,それからずっと好きだ。
俺は運良く宇治原と三年間同じクラス。
最後のクラスでまた宇治原と一緒に級長になった。
相変わらずどんくさいしあほだけど,俺はこいつの隣りにいれることが嬉しかった。
宇治原をからかうと
「浅木クンのば-かッ!!!!」って言って,いつもい-ッてやる。
そしてその後に笑う。
俺だけに向けられる笑顔だと勘違いしてた。
中三になってすぐの時,宇治原が瀬上と付き合ったという噂をきいた。
俺のがもっと前から宇治原のコトが好きだったのに...
俺に向けられてた笑顔は,すべて瀬上にもってかれた。
俺は宇治原への気持ちを諦めた。
そんな俺の気持ちを知らない宇治原は,変わらない笑顔を俺に向ける。
また勘違いをしてしまうぐらい..
今は修学旅行中。
担任との話も終わり,俺と宇治原は席に戻った。
その途中,どんくさい宇治原はバランスを崩して転けた。
いつもなら嫌味の一つでも出てくるのに,なぜか俺は手を差し伸べていた。
もちろん宇治原はすげ-驚いていた。
俺は恥ずかしさを隠すために,宇治原の腕を持って立たせた。
「あッ...ありがとう...」
顔を少し赤く染めて俺に言う宇治原が可愛く思えて仕方なかった。そして俺は言ってしまった。
「まァガキな宇治原も好きだけどな。」
宇治原はまた驚いてた。
俺はなんとか平常心を保って,いつも通りに接したつもりだ。
俺は足早に戻った。
そして気づいてしまった。
諦めてなんかいない。
俺はまだ宇治原が好きだ..